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レガシー企業レポート17 

レガシー株17

1989年12月31日にさかのぼる。次の新しい10年間の始まりを間近に控え、アメリカ株式市場は史上最高値でその年を終えようとしていた。しかし、年の終わりが近づいても、投資家のなかに高揚感はほとんどなかった。大手投資信託会社T. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)の社長エド・マチアスは、「株式市場に目を向けると、人々が有頂天になっていると思うかもしれないが、そうではない。ある種、喜びのない成功なのだ」と言った。

問題は1987年の株価下落が、まだ人々の心に残っていたことだ。ブラックマンデーとして知られる1987年の大暴落で、株式市場は数時間で22.6%も下落した。アメリカ株式市場において、1日の値下がり率としては今でも史上最高の下落幅である。大恐慌や大不況のときでさえ、1日でこれほどの大暴落を起こすことはなかった。ブラックマンデーが多数の投資家に一生消えない傷を残したのも当然のことだ。

1990年を目の前にして、史上最高値であっても投資家に元気がなかったのは、そういった理由からだ。その後、株式市場に戻って来なかった投資家も多くいたが、それは正しい決断だったのだろうか?

例えば1990年当時、あなたには自由に使える資金が100万円あったとしよう。将来のために資産を増やしたいと思っているあなたは、このお金をどうするだろうか?まだ株式市場に懸念を抱いているのであれば、その100万円は普通預金口座に入れるかもしれない。それは、当時であれば悪い方法ではなかった。1990年の普通預金の金利は8.1%であったし、90年代の平均金利は5%を超えていたからだ。

しかし、21世紀に入ると低金利になり、預金者の利益は下がってしまった。普通口座にそのまま預けていれば、2018年の終わりまでに229万3900円になっていたはずだ。そして、1990年から現在までの平均金利は2.7%である。この金利ではインフレに対応できない。

預金口座の代わりに、あなたはS&P 500のような株価指数に連動した銘柄に投資することもできた。S&P 500は銘柄の対象が広いので安心できるが、これも同様に、すべての企業が利益を出せるわけではない。それでもこちらに投資していれば、2018年までにあなたの100万円は1500万円を少し超えるくらいに増えていただろう。

連動銘柄の方が普通預金口座に預けるよりもずっと良い。インフレに対応できる利益も早く出せるし、実際に富を築いていける。しかし、レガシー銘柄#17に投資していれば、あなたの資金を100倍以上に増やせていたかもしれない。

1990年の時点で、この企業はすでに創業から116年を迎え、革新的な商品を生み出し、顧客が抱える問題を解決するという、長い歴史を持っていた。そして、同社は1990年当時、海外ビジネスの拡大に乗り出すところであった。あなたがこの企業に思い切って投資をしていれば、100万円は今ごろ1億4207万7100円にまで増えていたのだ!

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これは、S&P 500よりも10倍多い利益だ[S&P 500は、株式市場の全体的な動向を測るためにアメリカの金融業界が用いる指標である]。普通預金口座と比べたら、60倍以上の利益を生み出すことになる。そのような驚くべき成長を遂げてもなお、レガシー銘柄#17は今後30年以上も市場平均を上回る利益を生み出し続ける見込みがあるのだ。

地味な企業が高い利益を生む

このレポートを長く購読しているメンバーはご存知だと思うが、レガシーポートフォリオで私たちが目指しているのは、長期間にわたって容易に、しかも安全に8~12%のリターンを得ることだ。私たちは株式市場にどんなことが起こっても成長し続ける銘柄を求めている。つまり、投資家が配当金を再投資して、長期的な富の「レガシー(遺産)」を構築できるものである。

「レガシー」のクオリティーを持つ企業は非常にまれだ。私たちがめったに新しい銘柄を追加しない理由がそこにある。私たちに選ばれる企業は、マーケットでの支配的なポジション、高い収益性を維持する力、そして株主に利益をもたらし続けてきたという歴史があるのだ。

しかし、このような特質を持つ企業は魅力的に聞こえるが、目立たないことが多い。そして、それは今日紹介する銘柄に当てはまるのだ。私たちがポートフォリに加える17番目のレガシー銘柄……そして、私たちの3番目のジュニアレガシー銘柄になる。

レガシーとジュニアレガシーとの違い

すべてのレガシー銘柄はそれぞれの業界で優位に立ち、安定した収入を生み、投資家にとっては非常に堅実で安心できるものだ。ジュニアレガシー銘柄も同様の特長を持つが、ビジネスの規模は「小さめ」になる。ということは、さらに成長し、投資家により大きな利益をもたらす可能性があるということだ。


私たちが選んだこの企業は、ワクワクするような製品を売っているわけではない。「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙の一面を飾ることもない。また、CNBCのような経済専門のニュース放送局で取り上げられることもほとんどないだろう。しかし、地味な会社ほどレガシー投資者に利益をもたらしてくれるのだと、あなたもすぐに分かるだろう。その上、この企業の歴史は決して地味ではない。

1895年、この企業はアメリカ最大の自転車部品製造業者であった。1906年、同社はヘンリー・フォードのために鉄骨フレームを作り始め、1910年までには北アメリカ最大の鉄骨フレーム製造業者となる。

第一次世界大戦中はアメリカ軍用に爆弾を製造し、1933年には初の、大型1枚仕立てのガラス内張り醸造用タンクを考案した。第二次世界大戦中は再度アメリカ軍用に爆弾を製造するとともに、飛行機のプロペラや着陸装置、魚雷を製造する。1970年代には海外進出を開始し、ヨーロッパや中東で事業を展開していた。

そして、1990年代にはビジネスの改革をおこない、得意分野に重点的に取り組むために、ビジネスラインの1つを売却している。今日、このレガシー銘柄#17はその分野では業界トップであり、未だ衰えることなく成長を続けている。

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